中国電力 三隅発電所
昭和48 (1973) 年と昭和53 (1978) 年の二度の石油危機により石油価格が大きく高騰したことから、日本では、昭和50年代半ばから火力発電所の脱石油・燃料多様化の取り組みが進みました。このような中、三隅発電所1号機は、山陰地方初の大型石炭火力発電所として、平成10年6月に運転を開始。同発電所は、省エネルギー・省資源型の発電所を目指し、最新技術の高効率機器を導入したことで、石炭火力として当時最高水準の発電効率を達成しました。また、単機出力100万kWは、今なお国内最大級です。
同発電所は環境との調和を図るため、最新の環境保全対策を備えています。その中で、特長的なのは、世界で初めて採用した「大型鋼製角型集合石炭サイロ」。山陰地方特有の冬季の厳しい季節風による炭塵飛散の防止と貯炭量の増加等を目的にメーカーと共同開発したものです。また、石炭船から荷揚げした石炭をサイロまで送るコンベアにも防塵カバーを取り付けるなど、周辺の環境に配慮しています。
現在は、再生可能エネルギーの利用拡大を目的に、平成23(2011)年2月から林地残材と石炭との混焼発電を行う「林地残材バイオマス石炭混焼発電実証試験」に取り組んでいます。
当発電所の発電出力は国内最大規模の100万kWを誇り、石炭火力では初めてタービン入口蒸気圧力24.5MPa (250kg/cm2)、蒸気温度600℃という国内最高レベルの蒸気条件に加え、低圧タービン最終段翼(46インチ)を採用しています。これにより、従来の発電設備に比べ+2%もの発電効率の向上を達成しています。木質バイオマスと石炭の混熱発電をすすめるなど、新エネルギーに関する技術の採用も行っています。
ふれあいホール
高効率で環境にやさしいクリーンコール技術を、わかりやすく解説します。それぞれの空調で、見て、ふれて、ためして、実験を体験しながら、発見と感動にみちた楽しい時間をお過ごしいただけます。
蒸気タービン
ボイラで作った蒸気でタービンを高速で回し、この回転を利用して発電機で電気を起こします。タービンで使われた上記は複水器で冷やされて水にもどり、再びボイラに送られ蒸気となりタービンを回すという循環を繰り返します。
入口蒸気圧力24.5MPa(250kg / cm2)・蒸気温度 600℃とし、高効率化を図りました。また、高圧部・中圧(再熱)部・複流の低圧部で校正された「二軸4流排気式再熱復水形」を採用、翼は蒸気による腐食や侵食に強い、クロム合金鋼製としました。
ボイラ
伝熱特性に優れたライフル管を使用することにより信頼性を高めた「垂直管型超臨界圧変圧ボイラ」です。分割バーナ、炉内脱硝を採用することによって、低NOx燃焼技術の向上がはかられています。微粉炭機の高性能化や、亜歴青炭の混炭が可能な火炉サイズの採用に加え、多様な炭種の採用を可能にするためそれぞれの種炭特性に対応した制御方式(ガスの再循環・ダンパ制御)を採用しています。脱硝装置は高性能長寿命の触媒を採用し、目詰まりを防止するための「ガス縦流れ方式」、摩耗を防止するための「整流層」を設置しました。
発電機
固定子水冷却方式の採用で高効率化が図られています。励磁装置は保守性と系統安定度の高い、超速応ブラシレス励磁方式を採用、さらに発電機密封油装置・固定子冷却装置を一次発電機と二次発電機で共用化することで、コンパクト化と運転・保守性を同時に向上させることを図りました。
電気式集塵装置
高電圧により、煙の中の灰を集めて取り除き、清浄な排煙にする装置です。99%以上という集じん効率を誇ります。
排煙脱硫装置吸収塔
排ガス中の硫黄酸化物を石灰水と反応させ、石膏として取り除く方式で、脱硫効率90%以上を達成しています。
石炭サイロ
ひときわ目をひく巨大な建物、世界初の「大型鋼製角型集合石炭サイロ」の大きさは、長さ約139m、幅約105m、高さ約59.5mです。一般的に石炭火力発電所では、発電に必要な石炭を確保するため屋外の広大なスペースを貯炭場として使用しますが、炭塵の飛散防止と敷地の有効利用を図るため三隅発電所では石炭サイロ方式を選定。「大型鋼製角型集合石炭サイロ」を開発したことで、従来採用されていた円筒型のコンクリートサイロに比べ、貯炭量が約20%向上しました。
貯炭量は発電所の石炭消費量約45日分に相当する約40万t。12槽からなるサイロに炭種別に貯蔵することができます。
煙突
煙突を支える直径23mの外筒と実際に煙が通る直径7.8mの内筒2本(1本は2号用)で構成され、高さは200mにも達します。発電所周囲の景観に調和したブルーを基調としたボーダーラインをもつ外観が特徴です。
揚炭機
国内最大級のバケットエレベータ形連続式揚炭機2基。1基で1時間に2,800tの石炭を揚炭可能です。